離婚後、子どもや自分のこれからのことを考えると不安になり、眠れなくなりました。時々息苦しくなることも。どうしたら気持ちを整えることができますか。
A. 一番低い階段から登ってみましょう
離婚したこと、子どもの将来のこと、自分の将来のこと。いろいろな心配があなたの頭の中に浮かんでいるかもしれません。いつも不安で眠れなくなったり、体のあちこちが痛くなったりと、さまざまな不安はこころの病気につながることもあります。
「うつ」の気持ちと「不安」の気持ちは、同じようですが、ちょっと違うところがあります。「不安」はあるけど「うつ」はない、という人もいます。一番わかりやすい違いは、「うつ」の人は過去のことを振り返って悩み続けますが、「不安」の人は今から先の未来について悩むことです。
あなたは今、何に不安を感じているでしょうか? 「子どもは不登校になるかもしれない」「私は病気になるかもしれない」「家が火事になるかもしれない」など、とにかく何でもすべて心配で仕方がない方はいませんか? あるいは、ある特定の場面になると、不安が爆発して動悸や過呼吸を起こす方もいるかもしれません。または、「人の視線が怖くて外に出たくない」という人もいるでしょう。
これらの「不安」な気持ちは、「うつ」とは異なり、休んでいるだけでは良くならないこともあります。「不安」を克服するには、本当に少しずつでも、段階的に「不安」と向き合うことが必要になります(ただし、「うつ」と「不安」が両方ある方は、うつ状態の治療を優先します)。
治す方法は、認知行動療法などのカウンセリング、お薬があります。うつと同じようにやはり両方を組み合わせるほうがよいでしょう。認知行動療法は、精神科医師や公認心理師、臨床心理士のいる、メンタルクリニック、心療内科、総合病院の精神科、カウンセリングルームなどで行っています。お近くの治療機関に、認知行動療法を行っているか問い合わせてみるとよいでしょう。
Aさん(30代)の例を見てみましょう。Aさんは、2人の子を持つシングルマザーです。離婚以来、突然胸が苦しくなることが増えました。そこで、自分の不安が、いつ、どんな場所、どんな状況で現れるのか、記録をつけてみました(下)。
Aさんの不安の記録表(例)
日時 | 場所 | 何をしていた時か | 誰と一緒にいたか | 何があったか | 不安度 | その時どうしたか |
---|---|---|---|---|---|---|
◯月◯日 8時頃 | 電車内 | 通勤中 | 一人で他の乗客と | 過呼吸になった | 10 | 電車を降りた |
◯月◯日 16時頃 | 学校 | 授業参観中 | 生徒や保護者約40人 | 息苦しくなった | 6 | 部屋を出た |
自分の不安の強さを10段階で表し、そのときどんな行動をしたかも記入します。そして、毎日記録をつける中で、人の多い場所で息苦しく感じることが多いとわかりました。人間は不安を感じるとその状況をなるべく避ける方向に行動しようとします。
そこで、まず不安度の低い月1回の学校行事で、息苦しくなっても10秒数えるまで部屋を出ない練習から始めることにしました。乗り越えられたら10秒ずつ増やしていきました。シンプルですが、こんな感じです。この治療で一番大事なのは、「不安を克服しよう!」というあなたの気持ちです。でも、今はそんな気持ちになれないという方は、自分にとってのよいタイミングで大丈夫。きっと前に進めるときが来ますよ。
(子どものこころ専門医 坂野真理)
回答者のプロフィール
坂野 真理 虹の森クリニック院長・子どものこころ専門医
2003年日本医科大学医学部卒。近年は、2015年東京大学医学部付属病院こころの発達診療部にて勤務後、2016年英国キングスカレッジロンドンの精神医学・心理学神経科学研究所(IoPPN)にて修士号取得。2018年に児童精神科の診療所と放課後等デイサービスを同居させた「虹の森クリニック・こころのデイケア虹の森」(鳥取県倉吉市)を開院。
虹の森クリニック・こころのデイケア虹の森
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