3歳の乳幼児検診で、発達障害がある可能性を指摘されました。周りの子と違うなと思うこともありましたが、個性なのではと思っていました。子どもに障害があるかもと知り、ショックや不安で眠れません。
A.早めに療育(教育)をはじめましょう。
そうでしたか。突然の指摘にびっくりしたことでしょう。障害があるかもということはただでさえショックな上に、ひとりで育てていくことを考えるとなおさら不安ですよね。まずは深呼吸して、落ちつくだけで大丈夫ですよ。あなたの好きなことは何かしら。おいしいものを食べたり、好きな動画を見たりしたりして。ちょっとは落ちついたでしょうか。
さて、発達障害の可能性がわかったことは、お子さんにとって幸運なことだと言えます。えっ、なんで?と思ったかもしれません。少し説明させてくださいね。発達障害は、脳のつくりが生まれつき大多数の人と違うことを言います。
決して、あなたの育て方や環境の問題ではないんです。
そして、おおぜいの子どもの発達(定型発達児)とはすこし違う発達をたどるのですが、それ自体は本人が困ることではありません。
お子さんが困るのは、生まれつき苦手であったり、できないことを、周りから叱られたり否定的にとらえられてしまうこと。
そしてそれにより、うつや眠れないなど、感情や行動にゆがみが生まれることです(二次障害)。
お子さんにとって大事なのは、まわりが特性を理解し、本人にあった教育(療育)をすることによって、二次障害を予防すること。今回のように早く可能性がわかったことは、二次障害をふせぐきっかけになって、お子さんにとってよいことだと言えます。
今は、発達障害があるお子さん向けの教育法(療育)が開発されています。その方法は、発達障害の特性によって生じるつまずきそうなことに対して、発達が進むように訓練する方法です。1歳から始められ、早いほど効果が高いといわれているんですよ。
ここまで読んで、「療育」って、なんだかむずかしそうだし、まだ発達障害があるとは決まってないし……って思われた方もいるかもしれません。でも「療育」という言葉にかまえなくて大丈夫ですよ。今している子育てを、特性にあわせた子育てのやり方に変えるだけ。また、療育は、発達障害のないお子さんの発達にも良いと言われているんです! もし、発達障害がなくても、療育をはじめることはムダではないでしょう。
そして、お子さんだけでなく、あなた自身にもいいこともあります。お子さんにあった子育てができるようになると、お子さんが安定して、ぐずったり困ったりする回数が減っていくでしょう。
なるべく早く、健診の時の保健師などに相談し、公的な療育施設やサービスを利用できるといいですね!
できれば、本などを参考に療育をおうちでもためせると、とても素晴らしいです。でも、無理しないでね。できる範囲で取り組もうね。
健診で指摘がなくても発達に気になるところがある場合は、地域の役所の福祉課などに相談し、専門家や専門施設につなげてもらうといいですよ。
専門施設は親の心のケアも含めて応対してくれますので、ひとりでかかえこまずに積極的に相談してみましょうね。
福祉制度には、障害のある20歳未満の子をもつ親を対象に『特別児童扶養手当』があります。
障害の程度によりもらえる対象かどうかが決まるもので、受給に医師の診断書が必要になります。医師に相談し対象と診断されれば、市町村の役所などの窓口(福祉課など)で手続きしてくださいね。ひとり親向けの『児童扶養手当』と同時に受給することができますよ。
そのほかには、福祉サービスを受けやすくなる『療育手帳』があります。知的障害がある方が対象ですが、地域によっては発達障害がある方も対象になります。お住まいの役所の福祉課に相談してみましょう。
(監修:坂野真理)
監修者プロフィール
坂野 真理 虹の森クリニック院長・子どものこころ専門医
2003年日本医科大学医学部卒。近年は、2015年東京大学医学部付属病院こころの発達診療部にて勤務後、2016年英国キングスカレッジロンドンの精神医学・心理学神経科学研究所(IoPPN)にて修士号取得。2018年に児童精神科の診療所と放課後等デイサービスを同居させた「虹の森クリニック・こころのデイケア虹の森」(鳥取県倉吉市)を開院。
虹の森クリニック・こころのデイケア虹の森
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