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どうする? 男の子への性教育

どうする? 男の子への性教育

男の子への性教育、していますか?

全然関心がないように見える、または性的なことにふざけているなど、男子への性教育のきっかけやどう話し始めればいいのかを悩む声をよく聞きます。

その一方、インターネットやSNSには暴力的なアダルトコンテンツを含め様々な性情報があふれ、男児への性被害も社会的に知られるところとなりました。

筆者が代表を務めるNPO法人ピルコンでは、性教育についての情報発信をしていますが、男性の性器(大きさ、包茎)やマスターベーション・性欲、コンドームの使い方などは、若い男性から多く閲覧されたり相談を受けたりする内容になります。

一見悩みがなさそうに見える子も、インターネットの性情報や周りからの「男が悩むのは情けない」というプレッシャーを感じ、抱え込んで苦しんでいるかもしれません。

今回は男の子への性教育を始める3つのポイントを紹介します。

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「性は大事なこと」という前提で話そう

性=性交のこと、下ネタ、ひわいなこと、というメッセージは、既に社会のあらゆるところから発信されています。性について話すことが恥ずかしい、真面目に話せないという子には、性は健康や人生にとって大切なことであるという価値観から共有していくことが大切でしょう。「性はエッチなことだけじゃない。性のことを知ることは、自分や他の人のことを大切にしたり、幸せで素敵な大人になるためにとても大事なんだ」という意識を大人自身が持つところから始めてみてはどうでしょうか。

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「どんなあなたも大丈夫」と意識的に伝えよう

世の中には、たとえば「男の性器は大きいほどいい」「童貞や包茎はダサい」「マスターベーションをし過ぎると体に悪い」「マスターベーションをしないと体に悪い」「モテない奴は負け組」などなど「男はこうあるべき」という情報にあふれています。これらは科学的根拠にも多様性にも基づかない、偏った考え方です。

医学的な観点からは小指だけを大きくする方法がないように、身体の一部分を大きくする方法はありません。また、マスターベーションは回数が多くても少なくても身体に悪い影響はないですし、世の中で「包茎」とされるものの多くは治療の必要はありません。

「男の人でも性欲の強さは人それぞれ」「身体の一部分で人の魅力は決まらない」といったことを特別なことではなく、普段から普通のトーンで伝えていくことが大切です。

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信頼できる情報源をすぐ手の届くところにおこう

大人が性のことを口にする難しさを感じたり、子どもの方が親から性の話を聞くことを望まなかったりということもあるかもしれません。そんな時は、色々なサイトや書籍等で性を学ぶこともできます。

「面白いサイト/本を見つけたよ。よかったら読んでみて。何か困ったことがあったら、力になるからね」と言ってURLを共有したり本を手渡したりするのも一つ。その時は反応が薄かったとしても、「いつでも味方でいるよ、困った時は支えるよ」ということをおうちの人自身が示していくことができます。

また、学校の保健室の先生や担任の先生など周囲の人の力を得ることも役立つでしょう。 ピルコンや、「セイシル」「命育」といったサイトでは、専門家等とも連携しながら性教育の情報発信をしています。

子どもがAVや大人向けのポルノを性教育の教科書にする前に、まずは子どもも大人も、性について向き合ったり、リラックスして話せそうな範囲でオープンに話したりしてみてはいかがでしょうか。

専門家プロフィール

染矢明日(そめやあすか)
公認心理師、思春期保健相談士

染矢明日(そめやあすか)

NPO法人ピルコン理事長。中高生や保護者、教育関係者向けの性教育講座や情報発信や、政策提言の活動を行う。
著書に『マンガでわかる オトコの子の「性」』『はじめてまなぶこころ・からだ・性のだいじ ここからかるた』

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