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好かれない(嫌われる)権利

好かれない(嫌われる)権利

ストレスを訴える人の多くが、人間関係におけるストレスに悩まされています。

例えば、同じ職場で働く人も得意とする分野や特性、価値観、働く目的などは違います。
家族であっても「家族でなければ関わることがない」と思うくらい自分と価値観等が違うことはあります。

職場でも家族でも自分では「人選」をコントロールできないことがほとんどです。したがって、あらゆる人間関係において「相性が合う・合わない」という問題が発生することは決して不思議なことではありません。

コミュニケーションスキルが高ければ誰とでも相性が合うわけではありません。自分の職場に100人の同僚がいて、100人全員と相性が合うということは非現実的だと思いませんか?誰にでも通用するコミュニケーションスキルは「幻想」です。

しかし、相性が合わない人と関係構築が上手くできないと、つい「自分の側に問題があるから上手くいかない」と不安になったり、自分を責めたりしてしまいがちです。

どんなに自分が努力しても相性が合わないことがあるにもかかわらず、「自分の側に問題があるから上手くいかない」という思考にとらわれて相手に接してしまうと、不安と緊張から自分らしくない言動をしてしまい、結果、その相手とのコミュニケーションが上手くいかず、自分のコミュニケーション能力を疑い自尊感情を下げてしまうことがあります。

相性が合わない相手と接するときに重要なのは、自分が安心できる相手との「距離感(スタンス)」を見つけることです。この距離感は、一緒にランチをする頻度など物理的な距離だけではなく、相手の顔色をうかがってしまうなど精神的な距離も含まれます。

「自分の側に問題がある」と思っていると、つい相手の顔色を見てしまい相手の言動によって自分のスタンスを変えてしまいがちです。スタンスが定まらないと、相手に振り回されるリスクが高くなります。

相性が合わない相手とのスタンスを見つける上で大事なことは、「好かれない(嫌われる)権利」があることを意識することです。「自分の側に問題がある」と自分を責めて思考のネガティブスパイラルに陥るよりも、「好かれない(嫌われる)権利」があることを意識した方が、自分らしさを失わずに相性が合わない相手に対する感情の整理がしやすくなり、相手との安心・安全な距離感(スタンス)を見極めやすくなります。

実際、近づかない方がいい相手、巻き込まれない方がいい相手もいますし、そのような場合は「嫌われていた」方が安全ということもあります。

「好かれない(嫌われる)権利」とは、相性が合わない相手には挨拶をしないなど失礼な行為をすることの免罪符ではありません。相性が合わない相手に対しても、人としてのマナーについては、公平に一貫して適用することが前提です。

「好かれない(嫌われる)権利」のような自分らしさを大切にするための権利は、六法全書に明示されているわけではありませんが、他にもいろいろあります。それがここで紹介する「権利章典」(Your Bill of Rights)です。

自分らしさを見失いそうなとき、生きづらさを感じたとき、ぜひ読んでみてください。自分らしさを取り戻すきっかけになるかもしれません。

あなたの権利章典(Your Bill of Rights)

  • あなたがあなたらしくある権利
  • あなたがまず自分を第一に考える権利
  • あなたが安全を確保する権利
  • あなたが怒りを感じ、表現する権利
  • あなたが人としての尊厳を失うことなく扱われる権利
  • あなたが人間らしくある権利(完璧ではない)
  • あなたが自分の意見を持ち、表現し、それを真剣に受け止めてもらう権利
  • あなたの人生に影響のあることに関して質問する権利
  • あなたに影響のあることについて決断する権利
  • あなたの気持ちが変わる権利
  • あなたが「NO」という権利
  • あなたが失敗をする権利
  • あなたが自分の限界と優先順位を設ける権利
  • あなたが他の人の問題に責任を負わない権利
  • あなたが好かれない(嫌われる)権利
  • あなたが自分以外の人の期待にそった生き方をしない権利
  • あなたが「スーパーウーマン」「スーパーマン」でなくてもいい権利
  • あなたが人に助けを求める権利
  • あなたが自分を許す権利
  • あなたが自己主張しない権利
  • あなたが幸せに感じていないのであれば、自分の人生をコントロールし、変えていく権利

専門家プロフィール

高山 直子(たかやま なおこ)
カウンセラー

高山 直子(たかやま なおこ)

女性専門カウンセラーとして、大学のハラスメント専門相談員、東京都の労働相談情報センター心の健康相談員として活動。米国で女性学とカウンセリング学の修士取得。「自己尊重」「コミュニケーション」「メンタルヘルスケア」「エンパワメントにつなげる支援」「ハラスメント」をテーマにした講演多数。
著書に『働く人のための「読む」カウンセリング ピープル・スキルを磨く』(研究社)

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