【コラム】これってモラハラ?子どもに支配的になっていた自分に気がつき変わることのできた話

僕は「変わりたい」と願うモラハラ・DV加害者のコミュニティGADHAを運営しています。75%は男性、25%は女性で、それぞれパートナーやお子さん、友人関係などにおいて人を傷つけてきてしまったけれど、変わりたいという人たちが集まります。
実は、最初は(元)パートナーとの関係に悩んで参加する人が多いのですが、他の人の投稿を読んだり学んでいるうちに、子どもに対して支配的に振る舞ってしまっていたことに気づく人も少なくありません。
ある人はこんなふうに話してくれました。
「元妻にモラハラと言われて離婚になってしまったのですが、小学生の子どもとの関係は続いています。子どもと会える機会が貴重になったからこそ、毎回できるだけ価値のある体験をして欲しいと思って、ちょっと奮発してサッカーの試合やミュージアムに連れていっていたんです」
「でもある時、子どもから、パパって自分の行きたいところばっかり連れていくよねと言われてしまって…最初は正直イラっとしました。自分も仕事で忙しい中で色々調べて少しでもいい時間をと思ってやってあげているのに、生意気で恩知らずな奴だと」
「その時に、ああ、これまで自分はこんな時に元妻にキレていたんだということに思い至りました。自分が良かれと思って相手にしていることを喜ばれないと、いつも怒ってたんです。お前のためなのに、感謝するのが当然だと」
「相手の希望も聞かないで高機能の家電を買って、その機能をいつまでも使わないのを見るとムカついて、せっかくこんないいのを買ってあげたのにと嫌味を言っていました。それで、子どもから『パパって自分の行きたいところばっかり連れていくよね』と言われて、その記憶が蘇(よみがえ)ったんです」
「ああ、これだ…俺はこれをずっとやってきたんだと思って、怒鳴ったり嫌味を言ったりせずに、子どもに謝って、行きたいところを聞いてみたんです。そしたら、昔、時々遊んでいた公園でサッカーがしたいと言われて、拍子抜けしたというか、そうか、この子にとっての日常、父親との遊びってこういうことだったんだよなと肩の力が抜けた感じがしました」
「多分、子どもは子どもなりに我慢して、最初は自分に合わせてくれていたと思うんです。でも、あの時もし自分が元妻にしていたように怒鳴ったり、苛立(いらだ)って嫌味を言ったりしていたら、もう本当の気持ちは話してくれなくなっていたかもしれません」
彼はその話を元妻に伝えて、自分がやっていた加害についても謝罪したそうです。関係は変わらず事務連絡が中心なものの、子どもとの交流には今までより協力的になってもらえたとのこと。
パートナーとの関係において、無自覚にでも加害的・抑圧的・支配的に取り組んでいた人は、特に子どもに物心がついて自分の意見を持つようになると、子どもにも同じように振る舞ってしまうことがよくあります。
でも、自分でそれに気づいて変わることができる人はたくさんいます。少しでも心当たりのある方は、ぜひGADHAのような団体をチェックしてみてください。
もしかしたら本記事を読んで「加害者が変われるなら、自分にも何かできることがあったのかな…」とご自分を責めてしまう被害者の方もいるかもしれません。
加害者は大人であり、その変容を支援する義務も責任も被害者にはありません。まず何よりもご自身の心身の健康、そして安全を最優先されてください。
インフォメーション by イーヨ編集部
モラルハラスメントはDVのひとつ。心ない言動により相手の心を傷つけることで、精神的DVと呼ばれています。具体的には以下のような事例があります
- 大声でどなる
- 「誰のおかげで生活できるんだ」「かいしょうなし」などと言う
- 実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする
- 何を言っても無視して口をきかない
- 人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする
- 大切にしているものをこわしたり、捨てたりする
- 生活費を渡さない
- 外で働くなと言ったり、仕事を辞めさせたりする
- 子どもに危害を加えるといっておどす
- なぐるそぶりや、物をなげつけるふりをして、おどかす
- (男女共同参画局サイトより)
2024年4月には、配偶者暴力防止法で、保護命令制度の対象範囲が精神的DVにも広げられ※、厳罰化するなど、社会の理解も少しずつですが深まっています。イーヨにもモラルハラスメントに関係する体験談が多く寄せられています。よかったら参考にしてみてくださいね。
モラルハラスメント関連のイーヨの体験談やQ&Aなどの記事はこちらへ
プロフィール
ためになる本や映画
99%離婚 モラハラ夫は変わるのか 著:中川 瑛/出版社:扶桑社
モラハラ夫とは別れるしかない?変わりたいともがく、一組の夫婦の物語
「おれは仕事も家庭もうまくやっている」エリート会社員・翔がある日帰宅すると、家の中は真っ暗だった。 「どういうことだ?」この時すでに、【99%離婚】という状況になっていたことに、彼は全く気付いていなかった。
一方、「お前ってホント無能だよね。よかったね 専業主婦になれて」「ベッドで癒してくれない? じゃあもう風俗に行けってことだな」
「なにその服? もう少し体型戻さないと似合わなくない?(笑)」…夫の機嫌を絶えず伺い、傷ついてばかりできた妻・彩。自分がモラハラ被害者と気づいた彼女は、娘を連れて家を出ていた―。
「モラハラ夫は変わらない」世間ではそう言われています。これは、変わりたいと必死でもがく、一組の夫婦の物語です。
孤独になることば、人と生きることば 著:中川 瑛
人と生きていきたいのに、孤独になってしまう。
人はいずれみんな自分を捨ててしまう。
自分は誰にも愛されない。
そんな孤独への不安に苦しんでいる人へ、人間関係のパターンを「ことば」の観点から徹底解剖。
人間関係を改善する鍵は、言語化にあった。
・自分なりに一生懸命関わっているつもりだったのに、相手から離れられてしまう
・重たい話し合いからはいつも逃げてしまっているうちに、愛想を尽かされた
・よくしていたつもりだったのに陰で悪口を言われていた
・教育熱心のつもりだったのに、気づけば子どもに憎まれて連絡を断たれた
・パートナーが家を出て行ってしまって、離婚を望まれている
・約束したことを何度も守れず、信用を失ってしまった
・友達と何かトラブルがあった時に仲直りができずに関係が終わってしまう
・職場で自分の相談なく部下が辞め、精神的な問題を抱え、責任を問われている
・我慢を重ねていきなり爆発して怒鳴ったり物を投げてしまうのをやめられない
・長い人付き合いがほとんどなく、自分からいきなり関係を切ってしまう
などなど……
本書は、このような人間関係の悩みを解消する処方箋となるでしょう。