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母子家庭に育つと、心理的な発達に問題が生じるという医学的な証拠はありません!

ひとりおやの親子が電車で旅行から帰ってくるシーン

インターネットを見ていると、母子家庭についてさまざまなネガティブな記事が目立ちます。例えば、「母子家庭で育った子どもは、一定の傾向がみられるようだ」「愛情不足による過剰な甘え」「攻撃的になってしまう」「ぐれてしまう」「変に大人びている」などです。でも、ちょっと待ってください。誰がそんなことを証明したのでしょうか?

母子家庭については、大規模な医学的な研究はほとんどありませんが、イギリスではこんな研究があります。

「母子関係と子どもの心理的な適応について、51の母子家庭と52の両親のいる家庭(いずれの家庭においても、子どもは4~9歳で、ドナーバンクからの精子提供を受けて出生)とを調査し、比較したところ、子育ての質について、母子家庭のほうが母子の衝突が少なかったという点以外は、家庭のタイプによる違いはなかった。子どもの適応についても違いはなかった。経済的な困難さ、子どもの性別、子育てのストレスは、どちらの家庭においても、子どもの適応の問題と関係が確認された。この所見から、母子家庭であること自体は、子どもの心理的な問題にはつながらない、ということが示唆された」※1

つまり、母子家庭だから子どもが精神的に不安定になる、という科学的な証拠はありません。

しかし、これまでの研究で、母子家庭の子どもたちは、「自尊心が低い」「希望が持てない」「精神不安定」などの心理的な問題を抱えることが多いという統計調査があります※2。それは、母子家庭であることそのものが原因というよりも、母子家庭の母が経済的な困難さに陥ることが多く、子育てへの支援が乏しいという社会的な環境やその結果として母が心理的に不安定になりやすいという状況が、母子家庭における子どもへの精神的な状況に影響を与えていると考えられるからなのです。

一方で、日本における141.9万世帯のひとり親のうちの86.8%が母子家庭であり※3、その45.1%が生活を「大変苦しい」と感じている現状があります※4。日本のひとり親世帯の貧困率はOECDでも最悪の50.8%です※5

ひとり親を選択することが問題なのではなく、ひとり親家庭でも両親のいる家庭であっても、家族形態によらず幸せな子どもたちを増やすための社会の支援や施策が日本に乏しいことが問題なのです。

ですから、母子家庭だから子どもの心の発達が……などと心配しないでください。真偽のわからない情報に惑わされず、お母さんがストレスをためないようにしながら、お子さんとの時間を楽しんでくださいね。

(子どものこころ専門医  坂野真理)

プロフィール

坂野 真理

坂野 真理 虹の森クリニック院長・子どものこころ専門医

2003年日本医科大学医学部卒。近年は、2015年東京大学医学部付属病院こころの発達診療部にて勤務後、2016年英国キングスカレッジロンドンの精神医学・心理学神経科学研究所(IoPPN)にて修士号取得。2018年に児童精神科の診療所と放課後等デイサービスを同居させた「虹の森クリニック・こころのデイケア虹の森」(鳥取県倉吉市)を開院。

虹の森クリニック・こころのデイケア虹の森
https://www.nijinomori-dr.com/

ためになる本や映画

ひとり親でも子どもは健全に育ちます著:佐々木正美/出版社:小学館

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